平昌オリンピックを見て:スケート競技

平昌のオリンピックではいろいろな種目の美しい動きを堪能しました。
私なりの見方で見た感想を述べてみたいと思います。

スピードスケートの滑りを前からスローで撮っている映像を見ていたら、背骨が左右に交互に回転するさまがみてとれました。
背中の回転と同期して、両足が斜めうしろに押されていました。
両手は捻れんばかりに振られていました。
目は獲物を見つめるかのごとく、全身の動きはトラかヒョウのようでした。
報道でもケモノのようだといった言葉にレディに対し失礼だとかいろいろな反応があったそうです。
でも、小平奈緒選手が言うには、オランダで構えを指摘され「怒った猫のように」と言われ、より低い構えで腕を振ることを実行したそうです。
全力で加速するときなど両手を振る場合と、カーブを曲がるときなど片手だけを振る場合がありました。
片手を振りながらでも左右に力を伝えることができるのかなと思いました。
そこで、過日、スキーに行ったとき自分で確かめました。
緩斜面をスケーティングで滑っていく時、手を振ってみました。
両手では、スピードが出ないので合わず、難しいと感じました。
片手だけで左右に腕を振るのを真似てみると、じつに理にかなっていると感じました。
右手が右に振られる時に右足が前に出て行く、左足が出て行く時に右手を左に振る。
この動きだと左右の足に力を伝えることができるのでした。
左手は腰の真ん中に置くのも納得できました。
身体の中心を押さえて左右の動きを感じるのです。
片手をスイングしても全体をバランスよく動かしていることがわかるのです。
そして、スケートもスイング動作だ、左右の足に乗って、足の先のスケートの刃が氷を押して進んでいくのだ、と見て取れました。

パーシュートの写真を見て、前からの三人で構えた姿は美しい、一糸乱れず滑っていくのも美しいと感じました。
フィギュアも含めてスケートの人気が増してきました。
子供たちがスケートに取り組むことが予想されます。
ここで、私の持論を述べたいと思います。
スケートは立てれば滑れるということです。
まず美しく立つことを子供たちにスケートを教える中で指導してほしいと思っています。
股関節、膝関節、足関節のアライメント(並べ方)が良ければ足の真ん中に荷重することができるのです。
スクワットを教え、膝の屈伸方向と足関節の屈伸方向と一致させることを教えてほしいのです。
これができれば、スケートの刃の上に立つことができます。
逆ハの字で立って、片足で押して片足に乗ればすごいスピードで滑れるのです。
このスピード感は子供にはたまらないものだと思います。
刃の上で立てるならば竹馬も乗れるし、スキーも滑れるし、ハイヒールも履きこなせると思います。
スポーツ障害なくスポーツを楽しむことができると思います。
ぜひ、この基本の基を子供のときに教えて身に着けてほしいと思います。

私の少年時代、冬は寒く、屋外リンクがいろいろなところにできて、子供たちが集まってスケートを楽しみました。
ちゃんと教わることもなく、貸し靴を借りては滑っていましたが、見様見真似で上達は遅くいつまでも、ずっと手すり磨きに終始するだけでした。
その後、なんとか滑れるようにはなりましたが初級レベルでした。
スポーツドクターになってアライメントの良し悪しがスポーツ障害につながることを見つけ研究してきました。
日体大のスケート実習でも教わったことですが、スケートは刃の上にまっすぐ立つことができれば、簡単に滑れるものなのです。
東大の教員時代に学生たちをスケートリンクに連れて行って確認してみました。
ただ、問題なのが、貸し靴でした。
貸し靴だと皮の靴は変形してしまっています。
いいアライメントで立つことができる人が少なく、だんだん刃が傾いているうちに靴が変形してくるのです。
こうした靴を履くとまっすぐに立つのはむつかしいことになり、スケートが難しいものになります。
幸い今は、プラスチックのブーツが出てきました。
アライメントよく美しく立つことをスケートに行く前に身につけておくといいと思います。
スケートがとても楽しくなるでしょう。
基本となる立ち方を教えるのにスケートはとてもいいものだと思います。
子供たちに是非教えるべきだと思います。
いい選手が続いていくことを願っています。

渡會公治

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美立教室1月のテーマ

2018年1月のテーマは「犬も歩けば棒に当たる、ヒトも歩けば転ぶことがある」です。
「犬も歩けば棒に当たる」というおなじみのいろはカルタの意味は、だれでも生活していると、けがの可能性があるということだと思います。
ヒトも歩けば転倒するけれど、高齢者は転んではならないのです。
転ぶと骨折をする可能性があり、股関節骨折の予後が悪く、がんより怖いといわれているからです。

そこで、転倒対策が必要となるのです。
われわれの美立が転倒対策になります。
まずは、いいアライメントで立つ、スクワットをします。
スクワットの次に、一歩を踏み込むときにいいアライメントで行うレッグランジを行っていきます。
また、「とっさの一歩」という言葉が転倒対策でいわれます。
美立健康体操ではとっさに踏み込んで、レッグランジを行うことがそれに当たります。
さらに、転んだときは上手に転ぶことを練習しておくこともすべきだと思います。
これは、受け身の応用です。

転倒は若い人でも起こります。
とくに、スポーツではよく見られます。
相手を転倒させるのが目的の格闘技もあります。
コンタクトスポーツではタックル、ボディコンタクトで転倒がよく見られます。
そして、スポーツ外傷の原因一位が転倒です。
つまり、若い人でも転倒すればけがをする可能性があり、転倒しないためには準備がいるというわけでトレーニングが行われます。

スポーツ医学では外傷予防のために受傷の原因要因を追究します。
その中で要因を、個人要因と環境要因とに分けて追及します。
原因要因が分かれば対策が立ちます。
個人要因とは、スポーツ歴、職歴、生活習慣、病歴などが考えられます。
別なことばでいうと昔からの言葉で「心技体」です。
体力、技術、精神に欠けたところがあると弱いところに無理がかかるというわけです。
競技参加には準備が必要で、トレーニングが必要となります。
もうひとつの環境要因とは「天地人」という言葉がいいと思っています。
天候や慣れない土地での試合、相手の技量、仲間のチームワーク、指導者の指導法などが要因になります。
チームをサポートするスタッフの腕の見せ所でもあります。
体育館の床の状態やグランドなどの環境整備なども含まれます。
スポーツ医学の智恵は高齢者の転倒、骨折の予防にもつながるものです。
普通の生活に必要な体力、技術がなくなってないかチェックしたり、普段歩く道の選び方や床が整理整頓されているかなどです。

最近のレポートですが、米国においては、
65歳以上の全医療費の約6%が転倒に関わる医療に費やされている。
不慮の事故による死亡は、死因別では心血管障害、悪性新生物、脳血管障害、肺障害に次ぐ第5位である。
不慮の事故の内2/3が転倒によるもので、さらにその75%は65歳以上である。
転倒は65歳以上の死亡率の13%に該当する。
という極めて驚くべき事実があるということが転倒予防学会のHPにありました。
また、この学会の理事長 武藤先生(整形外科医)の挨拶があり、転倒事故を原因として死亡に至るいわゆる「転倒死」の事例は、今や年間7,000 件を超え、交通事故死7,500 件に迫る状況であると警告しています。
また10 月 10日は 転倒予防の日となづけて、寄せられた 転倒予防川柳 (予防学会歴代大賞作品)が紹介されていました。
離さない 昔は君で 今は杖 (2017)
あがらない 年金こづかい  つま先が (2013)
口先の 元気に足が 追いつかず (2011)

転倒対策で、見直す必要があるのは飲んでいる薬と生活習慣です。
また、自分の身体の現状をチェックすることも定期的に行いましょう。
ロコチェック、ロコモ度チェックもおこないましょう。
またメタボチェック、認知チェック、活動度チェックもしましょう。
結論は、自分の身体を知って上手に身体を使おう、美しく立とう、美しく歩こうといういつもの話になります。

具体的にはランジと受け身の練習です。
転倒予防のためにとっさの一歩の練習をしようといわれますが、とっさの一歩のトレーニングとしてレッグランジがいいと思います。
まず、つま先と膝が同じ方向に踏み出して足の真ん中に体重を載せるという練習です。
最初は膝の上に両手を置いて筋肉が固くなるのを確認しましょう。
親指で大腿四頭筋、後ろに回した指でハムストリングス、内転筋の同時収縮を確認するのです。
足の置き方、膝の向きでこれらの筋肉の収縮が違ってきます。
全部同時に入るように、足全体力がかかることを感じて行いましょう。
それができたら、手は膝からはなして、斜め前、横、斜め後ろといろいろな方向に踏み込みます。

受け身を練習しようというと引いてしまう人が多いのですが、誰でもできることを家でも練習しようと勧めています。
転倒事故で一番多いのは前に転んで手を着いて手くびを骨折してしまうという事例です。
前受け身は顔が床に当たらないように両手を同時につきます。
肘も含めて前腕と手を同時に着くのです。
接地面積を広くして1箇所に負担をかけないようにという工夫です。
顔が落ちていくとすごく怖いのですが、一度練習してみると以外と顔が着く前に時間があって、両方の手と前腕を着くことができることが実感できます。是非、お試しください。

後受け身は尻餅をついて脊椎を圧迫骨折するのですが、尻餅をつきそうになったら背中を丸くして、両足を上げて、後に転がりましょう。
そのとき、大切なのは頭を打たないことです。
頭は3-5kgあって重たいので慣性の法則でごっつんとぶつけることになりがちです。
すると脳がやられる可能性があります。
そこで、柔道の受け身では転びながら、両手を広げて地面を叩くと同時にあごを引くのです。
練習は座布団を頭の来るところにおいてお尻を着いてしゃがみます。
後に転がり背中が床に付いたタイミングで床を叩き、頭が座布団に着かないようあごを引きます。
わかっていても、何人かやると頭が座布団に当たる人がいます。
寝床で練習しましょうと勧めています。

横に転んで大転子をぶつけると大腿骨頚部骨折が起こります。
この対策は手を着かずに側方回転受身ですが、これは高齢者には無理なので、横向きで手を着いて支えてもらいます。
この支える姿勢だと手の指先は頭の方向を向いていると思います。
この手の向きを逆に向けると肘が曲がり背中が着いて転がります。
横向きの転倒対策は、手で支えないこと、手を着かないで倒れてみましょうというとです。
背中から着いて受け身を取ることになります。

これらの受け身の練習はやってみるといい体操になります。
高齢者にやって効果があるのといわれることもありますが、みなさん楽しんでやってくれます。
何年か前の経験ですが、おかげで大事に至らずに済みましたと感謝されたことがありました。
高齢の母親と来た方でしたが、前年母親が転倒して手くびの骨折をして手術をしたそうです。
先日のこと、同じように転んだので、あ〜またと思ったのだそうです。
でも、手を着かずに円くなって転んで事なきを得たそうです。
練習が役に立ったと感謝されました。
皆様に紹介する次第です。

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年頭のご挨拶

皆さま明けましておめでとうございます。
美立健康協会は今年で6年目を迎えます。まだまだ認知度は低いのですが、ロコモ美立体操を行っている方からは高い評価をいただいています。ロコモ美立体操は3つのS(Squat:スクワット、Stretch:ストレッチ、Spine Exercise:背骨ほぐし)をするだけという体操です。しかし漫然とするのではなく、そのエッセンスとなっている3つのA(Anatomy:解剖学、Alignment:アライメント、Awareness:気づき)を身に着けることが重要です。このことをどう理解してもらうか、そしてどうすればこの体操を継続してもらえるかを考えることがこれからの課題だと思っています。

私ごとですが、2017年3月に帝京平成大学を退職しました。少しは暇ができるかと思っていたのですが、ご縁があって帝京科学大学の特任教授として週2回授業を行っています。あわせて整形外科の外来診療を水曜日と木曜日に半日ずつ行っています。結局、自由になる時間は殆ど増えていませんが、楽しく健やかな毎日を過ごしています。
ロコモ美立体操を広める拠点を作るべく、自宅で美立道場をはじめました。道場には病院で診るべき人も来るかと考え、浅草寺病院で外来を始めました。
より美立に興味のある人を対象に菅平セミナーを年二回行っています。雪残る春先と紅葉の時期、長野県菅平高原で開催しています。ご一緒にスノーシューやノルディックウォークを楽しめたら幸いです。
目黒ゴルフ練習場、コモアカデミーと一緒にゴル健合宿という催しを年3回行っています。ゴルフで健康づくりがコンセプトで、ロコモゴルファーを治したい、防ぎたいとの思いで続けています。ゴルフ好きな人はご参加ください。

下の写真は自作の紙製のイヌです。これは、従来、授業やセミナーで行ってきたペーパー解剖学をアレンジしたものです。ペーパー解剖学は解剖学を立体的に理解するには自分で作ってみることが一番だと思い始めました。型紙を載せますので印刷してご自分で作ってみてください。赤い線を切り、破線を山折りにして、適当に丸めて、★どうしをホチキスで止めるだけです。

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平成30年1月吉日 渡會公治

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美立教室11月のテーマ

11月の美立教室のテーマは「基本動作、美立の黒帯になるには」です。
「基本動作」とはなにかとインターネットで検索してみると、リハビリ、武道、消防、社会人としての基本動作がでてきました。もちろん、我々にとっては美しく立つことが基本的な動きですが、立つ前に起きることが重力の世界では基本です。そして、その前の、這うこと、寝返りを打つことも基本動作になります。生きていく本当の基本動作は呼吸、摂食、排泄でしょうか。

「美立の基本動作」は美しく立つことです。立てる人たちが痛くならないよう、疲れないよう、よりよい立ち方を探して身につけようとすることで3つのAをめざし、具体的に3つのSを行おうというのです。これをしっかり身につけ、頭でも理解して生活習慣にすることを美立の目標としています。

美立道場に通って長くなる人に有段者になってほしいなと思い、美立の黒帯に必要なことを考えました。
【美立の黒帯がめざすこと】
その第一は、身体の仕組みに興味を持つことだと思います。まず立つための下肢の関節(骨盤・股関節・膝・足関節・足)の仕組みと並べ方についてです。
股関節は骨盤と大腿骨からなる大きな関節です。いろいろな方向に動きます。大きなお尻がヒトの特徴といわれますが、たくさんの筋肉が何層にもなって働いています。膝は、大きな可動域の股関節と違って、曲げ伸ばしの構造です。この膝を捻るからこわれるのです。膝を多少ねじってもなんともないのは、球形の股関節と足の距骨下関節のおかげです。つまり、ヒトの足は回外、回内するということです。
そして、その組み合わせによっていろいろな立ち方が可能になり、その人の癖ができてきます。足のタコや靴の変形はいままでにかかったメカニカルストレスを物語るものです。
そこで、障害持つランナーに限らず診断治療には走り方だけでなく、歩き方、立ち方のチェックが必要になります。

第二に、アライメントよいスクワットを身につけていることが望まれます。
チェックポイントとしては、
・足の真ん中に荷重している。
・曲げた膝がつま先を向いている。
・曲げた膝がつま先をこえずにハムストリングに力が入っている。
・かべ体操して壁から離れるとおかしいと感じる。
・股関節を中心として、背骨、下肢をストレッチする技術がある。
さらに、以下のことを身につけているといいでしょう。
・真向法をおぼえて、継続している。
・背骨をイメージでき、背骨ほぐしができる。
・ワイパー体操・ホフク体操・肘まるが上手にできる。

中級レベルは以下のことを身につけていることが望まれます。
・壁なしでもよいアライメントでスクワットできる。
・片足でもよいアライメントで立ち、スクワットできる。
・よいアライメントでレッグランジができる。
・また、基本のストレッチは床で行う真向法です。
・真向法するなかで、骨盤を立てることが理屈と体で分かることが望まれます。第2,3,4法で伸びるハムストリング、内転筋、大腿直筋が分かるようになってください。
・基本の背骨ほぐしでは、身体の動きの中での背骨の動きがイメージできる。
・ホフク前進、後進ができる。
・八段錦を覚え一人でできる。
・初級者の3つのSの指導ができる。

上級レベルでは以下のことを身につけていることが望まれます。
・スクワット、ランジ、歩きの中で股関節をイメージできる。
・動くなかで背骨と上肢下肢との連動が分かる。
・膝のアライメント、足のアーチがわかる。
・椅子でも真向法が指導できる。
・八段錦の指導ができて、その中の3つのS(スクワット、ストレッチ、背骨ほぐし)が分かる。
・中級者の指導ができる。

さらに工夫をしてアイディアを練り、勉強をして知識を求め、より良い体の使い方をめざしていくのがいいなと思っています。そこで、インストラクターの皆さんの精進を期待しています。

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美立教室10月のテーマ

10月の美立教室のテーマ はふくらはぎです。
ふくらはぎのことを昔の言葉ではこむらとかこぶらといいます。
こむら返りはスポーツ障害だけでなく、中高年にも多く見られる病態です。
とくに、冬になると明け方にけいれんして困る人も大勢います。
この対策も兼ねて、ふくらはぎについて述べていきます。

ふくらはぎは下腿の後ろに膨らんでいる部分です。
皮膚の下に触る筋肉を下腿三頭筋といいます。
二層になっていて、表層には内側外側の腓腹筋が膝を越えて大腿骨についています。
腓腹筋の下層はヒラメ筋です。
魚のヒラメのようだということでその名前がついています。
ヒラメ筋は腓骨脛骨に着いて足関節をまたぐ一関節筋です。
腓腹筋は膝と足関節をまたぐ二関節筋です。
二関節筋のほうが複雑な調整を必要とするのでけがや障害が多いといわれます。
ヒラメ筋の下にまだ筋肉が並びます。
後脛骨筋、長母指屈筋、長趾屈筋です。
足指を曲げる筋肉ですが、地面をつかむ、押す筋肉です。
歩くとき走るとき働きます。

ふくらはぎの太さを測ってみると首と同じなのでやってみましょう。
親指と中指の間を広げて左右の手で輪を作ります。
この輪の中に頸とふくらはぎを入れてみましょう。
太い人は親指の間の距離で、細い人は指の重なる部分で比較できます。
太い人も細い人も首とふくらはぎの周径が同じだという人が多いのです。
これは昔からのドイツの解剖学書に書いてあったことですが、ラグビー選手で私が確かめました。
太いフォワードの選手は太いなりに等しく、細いバックスの選手も同じ太さでした。
ただ、トレーニング中の東大のラグビー選手は首を鍛えろと言われて頸が太い選手が多かったという思い出があります。
上半身と下半身のバランスを見るいい指標であると使っています。

普通、ヒトのふくらはぎは左右同じ太さです。
しかし、剣道選手では左ふくらはぎが発達して左右差がみられます。
同時に、右大腿四頭筋が太くなっています。
左側で蹴って右足で着地するためです。
しかし面白いことに、上級者になると左右差が小さくなってきます。

そして剣道選手は発達した太い左側のアキレス腱断裂をきたします。
使いすぎて疲労している状態になっていたからといわれます。
アキレス腱と連続している腓腹筋の肉ばなれは中年のテニスプレーヤーに多くみられます。
ほとんどが内側頭に起こります。テニスレッグという別名がついています。
腓腹筋肉離れとアキレス腱断裂は同じ受傷機序で起こります。
腓腹筋肉離れの治療では踵の下に台を工夫し補高します。
つま先立ちは痛くてできないのですが、ハイヒールを履いたように補高すると痛くなく荷重できる理屈は腓腹筋の緊張が緩むからです。
だんだんに高さを減らして3週くらいで腹筋肉離れはなおります。
アキレス腱断裂ではギプスを巻いて同じような考えで治療を行いますが、2ヶ月くらいかかりますので、心配な人や急ぐ人は手術を行います。

【そのほかのふくらはぎあれこれ】
委縮
宇宙飛行の研究のなかでも重力の影響を調べることは重要テーマです。
その実験モデルとなるのが尾部懸垂実験で、しっぽを縛られてつるされ、後ろ足を着けなくなったかわいそうなラットの実験です。
前足で移動することは許されています。
かなり自由に動き回って餌を食べることもできます。
しかし、数週間後、尾部懸垂ラットのヒラメ筋が萎縮する、下肢骨密度も減少することが実験で明らかになっています。
つまり、足を地面につけて使わないと、いくら動かしていても筋肉と骨は少なくなってしまうのです。

こむら返り
最初に述べた、ふくらはぎの筋肉がつる「こむら返り」とは筋肉のコントロールが効かず筋収縮し続けしてしまい、痛みを訴える病態です。
先日来た患者さんは長い立ち仕事の後、ふくらはぎが痙攣するようになった、最近では毎晩、夜寝ていて明け方つってしまう、何とかしてほしいということでした。
一般的に、冬になるとつる人が多くなります。
多くは高齢者です。若くてもなる人がいます。
おなかが大きくなって血流が乏しくなる妊婦です。
スポーツ選手も起こします。
テレビでもサッカーの延長戦などでこむら返りをおこしながら、替えの選手がいなくて苦しそうに走る姿を見ることがあります。
そして、倒れると、仲間の選手が足を持ち上げ、足裏からふくらはぎをストレッチする光景が見られます。
スポーツ障害は極端な例としてわかりやすいと思います。
私のチームドクターの経験でも、練習より試合で起こることが多く、しかも大事な試合になると起こります。
つまり、がんばって疲れると起こりやすくなります。
大事な試合だと疲労してもがんばります。
脱水も起こり、電解質異常も筋肉を興奮させます。
メンタルストレスもいわれますが、大きな試合で起こりやすいことがそれを物語ります。

けいれんが起こってしまったときどうするか
こむら返りはコントロールが効かず筋収縮し続ける状態です。
サッカー選手のような選手でしたら、仲間の足を持ち上げ強引にストレッチできますが、普通のお年寄りだととってもできそうもありません。
そんなときは、思い切り強くつかむのです。
けいれんの痛みよりも強い痛み刺激を与えるのです。
そうすると、けいれんが止まります。
それから、ふくらはぎをストレッチするのです。
足首をもって、反らしてもらう、力を加えてその力に抵抗する。
足を反らす筋肉に対しては拮抗筋である腓腹筋が緩んだらストレッチする。
というのもいいでしょう。

薬はないのか
こむら返りの特効薬として漢方薬の芍薬甘草湯があげられます。
結構効きます。
私も毎朝けいれんするという患者さんには朝晩飲んでもらいます。
すると、発作がなくなるか、時々になります。
そうしたら、起こった時に飲むようにしていきます。
けいれんしてからでも効きます。
しかし、予防としては身体の手入れです。

予防はどうするか
予防は脱水に気をつけ、カルシウムやカリウムなどの電解質をおぎなうこと、そして温めること、筋トレそして足の手入れコッキンカンマッサージです。
温めるのは、レッグウオーマー、湯たんぽなどですが、ペットボトルにお湯を入れて厚い靴下をはかせるというのがある患者さんの工夫です。
ふくらはぎを鍛えるには、おなじみのスクワットです。
そして、ヒールレイズ・カーフレイズです。つま先で立つことです。
四股でもいいでしょう。降ろすときつま先から降ろします。
四股は片足立ちして、股関節を大きく動かします。
とてもいいトレーニングですが、むつかしいのでどこかを支えにしてやりましょう。
元気な人なら、縄跳びをすすめます。
縄なしその場跳びが安全で、場所を選ばずできます。
1分もできないのではないでしょうか。
5分やれば有酸素運動としても十分でしょう。
ストレッチは膝を伸ばして腓腹筋アキレス腱を伸ばすのと、膝を曲げてヒラメ筋アキレス腱を伸ばす二通りをしましょう。

マッサージ
ここ数回紹介してきたコッキンカン骨筋管マッサージがいいと思います。
筋肉を緩めて、骨を触るようにマッサージをすると血管、リンパ管もマッサージすることになり血行もよくなるという自分で行うマッサージです。
こつは筋肉を緩める肢位を探すことです。
この場合、足を底屈(尖足位に)して緩める、膝を曲げて緩めることです。
アキレス腱を緩めて腓腹筋越しに脛骨腓骨の後面を触ってみましょう。
足裏に行く長い腱、長腓骨筋腱、後脛骨筋腱を緩んだ腓腹筋越しに尖足位で触ってみましょう
そのほか、ふくらはぎの太さは下肢筋力のみならず、体型や栄養状態といった全身的な状態との関連も報告されており、虚弱高齢者の体型・体力やサルコペニア(Sarcopenia)を評価する指標として注目されています。
栄養が最大要因といわれますが、栄養とともに正しいフォームからのトレーニングも大事なポイントだと思います。
スクワットとつま先立ちを生活習慣にしていきましょう。

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