養生学会に参加しました

養生学会に参加してきました。
養成と書き、「ようじょう」ではなく、「ようせい」と読みます。
体操で健康をめざす体育の先生たちの集まりで、東洋的な養生法、太極拳や気功などに興味を持つ人が多く、私も昔から参加しています。
第19回の今回は東京農工大学で開かれ、テーマは「笑い」でした。

最初のゲストスピーカーはNHKでディレクターとして「ひょっこりひょうたん島」を作った武井博さんでした。
武井さんは「ひょっこりひょうたん島」の誕生秘話やエピソードを以下のように語ってくれました。
ユダヤの格言「生物の中で人間だけが笑う。人間の中でも、賢いものほどよく笑う。」が発想のきっかけとなり、北杜夫さんの名著「あくびノオトのほら吹き3人男」からヒントを得て、「ひょっこりひょうたん島」が生まれた。 
しっかり者の子供たちとほら吹きの大人の組み合わせが斬新だった。
当時、教育番組には子供の笑いはなく、生真面目一色だった。
そんな環境の中で、こわごわと始めたのが「ひょっこりひょうたん島」だった。
入社4,5年の27歳の若者が29歳の井上ひさしさんと作っていたのだからいい時代だったのだろう。
井上ひさしさんは調べものをしている内、どんどん違うところへ行ってしまい、深みにはまるから遅筆だったが、これが後々財産になった。
武井さんと井上さんとはアパートの隣合わせに住んでいて親友だった。
武井さんは井上さんを「嘘つき」と言っていたのだが、これは柳田邦夫さんの至言「こどものうそはすぐに叱るな、創造性の豊かな作家になるためには必要なことだ」を念頭に置いた究極の誉め言葉であり、究極の井上ひさし論だ。

次は西野式呼吸法の師範でもある、東京農工大の田中幸夫教授の講演でした。
「口角を上げると脳は今、笑える状況だなとだまされる。脳をだませば、それに従って身体は反応する。いいほうに回っていく。ゆっくり呼吸をしても同様である。」とのことした。
笑うことによりストレスチェックデータが変化するか、実験授業が行われました。
唾液のアミラーゼ活性と血圧脈拍数を測り、笑う実技の前後で比較しました。
笑顔を選ぶことでストレス度が分かる質問票にも興味を惹かれました。
私のストレス度はかなり低く、気をよくしました。

最後は東京工業大の小谷泰則助教による脳の話で、最新の研究結果をベースとした面白い内容でした。
小谷先生はサッカー少年でしたが、指導方法に懐疑的で練習に身が入らず、部活は面白くなかったそうです。
それが高校途中で柔道を始めると、素晴らしい指導者に出会い、合理的な練習を重ね優秀な成績を上げ、筑波大学に入ります。
しかし、大学の柔道部は中高のサッカー部と同じで、非合理的な練習と上下関係、この環境が嫌で先生は選手をやめ主務となりました。
卒業後は柔道界から逃れるために研究者となったそうで、意外に思いました。

講演のスライドは初期Mac Plus(コンピューター)の写真から始まりました。
当時60万円だったMacが今は半額で、しかも性能はこの間に飛躍的に進化しました。
従来は出来なかったことが容易く出来るように、見えなかったものが見えるようになり、感慨深い変化です。
小谷先生は大学院では生理学の研究室に入り、”fMRI”の研究に従事しました。
この ”fMRI”は、ある物事が起こった時に脳のどの部分が活発に活動したかを可視化するもので、ベル研究所のノーベル賞候補、小川誠二先生の発明です。
心理学の世界で限界のあった心と感情の様子を客観的に”fMRI”で測れるようになり、心の研究事例が世界中で増えました。
情報化が加速する中、いまや研究も、”open source” および“open access”の時代だと言われています。
”fMRI”のソフトは公開され、論文はただで読め、メーリングリストに登録すれば無償で指導さえ受けられる環境だと説明してくれました。
こんな、世界中での研究の結果、10年で何をしたときに脳のどこが働くかの局在探しは終わってしまい、いまは、脳の中の3つのネットワークが、どう働くかの研究が流行りだそうです。

ネットワーク解析とは時系列で同じ働きをしているものを引っ張り出すことで見つけます。
どんなときに、これらのネットワーク間の働きが起こるのかを見るという研究です。
3つのネットワークとはデフォルト・モード・ネットワーク、中央実行ネットワーク、顕著性ネットワークです。
デフォルト・モード・ネットワーク は安静時も活発に活動しているもので、認知症では低下、うつでは強化されます。
中央実行ネットワークは何かに集中し実行するときに働きます。
顕著性ネットワークは、感情の体験と関連する脳の部位である島皮質と関係し、心と体をつなぐ働きをしていて、デフォルト・モード・ネットワークと中央実行ネットワークとの切り替えを行っています。
つまり、体からの情報がネットワークを切り替えているということがわかってきました。
要するに、身体主義の復活であり、脳は身体の奴隷だとも言っていました。
そして、「身体が中心にならなければならない」という、体育の先生の昔の話が腑に落ちました。
そして以下のようなまとめがありました。
意思の中枢は前頭葉下部にあり、これが働き、顕著性ネットワークに抑制をかける。
顕著性ネットワークは、年齢とともに発達するもの(他のネットワークはほぼ生まれつき)であり、青少年期におけるしごきや強制は、この発達を阻害する。

終わったあとの懇親パーティでビールを飲みながら、いろいろな人と話ができ有意義な学会になりました。

渡會公治

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